膝上の珍事

今日も会えたらいいなと思いつつ家へ向かって歩いていたのだが、クロちゃん家の前を通ったけどミケにゃんも仔猫達も姿を見せなかった。それで、クロちゃんは居てくれるだろうかとちょっと不安になりつつ、いつも撫でている場所へと歩いていくと、いつもの駐車車両の下から「にゃあんっ」「にゃあ」「にゃあっ」「あっ」「あっ」と鳴きになきまくるクロちゃんが登場した。
「寂しかったよ」「待ってたよ」なんて言ってくれてるのかと思ってしまうほど、いつもよりやたら鳴いていてちょっと興奮しているみたいな感じ。
「寂しかったよ」「待っててくれたのね」と返事をして、いつも撫でている場所へと走っていくクロちゃんについていく。

まずはキャットフードを差し出し、食べるのを待ってから撫で撫で。キャットフードはミケにゃんと仔猫達の分も入れているので、途中で掌にキャットフードを乗せてそれを差し出し、容器の方はフタをして仕舞った。
掌に乗せたキャットフードを食べ終わると、グイッと伸びをして満足げな様子で今度は撫でてと擦り寄ってくる。食意地が張っていないので感心。

撫で、撫で、撫で。しゃがんでいる傍を何度も行ったりきたりして撫でられているクロちゃんのノドからは、小さくゴロゴロという音がしてくる。なにせ可愛い。
ウロウロと動くクロちゃんを撫でているとき、片ヒザを立てて、もう一方のヒザは水平にして座ったら...おもむろに水平にしているヒザに手を乗せて、よっこいしょっという感じでもう一方の立てていたヒザへと手を伸ばし、片足を水平にしているヒザに乗せたクロちゃんだったが、それ以上は乗れないと判断して降りた。
クロちゃんとは1年以上の付き合いだが、今までに3、4回ほど抱っこしたことがあるけどあまり好きそうじゃなかったのに、膝の上に乗って来るなんてとちょっと驚いた。
そういえば、飼い主のヒザの上でまったりしている姿を見たことがあるなと思い出し、もしかしてそんな風にしたいのかと駐車車両に背中をもたれて両ヒザを水平にしたのだが、膝の横に体を摺り寄せながら何度か往復するばかりでヒザの上に乗る様子がない。
そこで、クロちゃんの視線をヒザに向けさせてみた。手に顔を寄せようと近づけたので、その手をヒザの上に移動すると、動きを追って視線がヒザの上の方に向いた。すると、おもむろに片手を乗せて確認するようにちょっと動きを止めた後、ややあってグイッと体重を乗せてきて両手が膝に。さらに両手に体重が乗り後ろ足が左、右と膝の上へ。嬉しすぎる〜と叫びそう。

クロちゃんは背を向けている。顔は向こう側、お尻をこちらに向けてヒザ先のところで前足をモミモミ。
そんなクロちゃんの首や肩のあたりを撫でたり、軽くもんだりしてヒザに乗せている嬉しさに浸っていのだが...私のお腹のあたりから妙な音が聞こえたようだった。
「プ....プッ」という小さくて高い音を耳にして、「えっ」と思ったのと同時に「う"っ」となる。
これはっ...やられてしまった...のかも。そう思ったとたん、鼻がツーンと痛くなりそうな臭いが...「う"げっ!」「クロちゃん、屁をしたの?」「ねえ、屁をしたでしょ!」その問いかけに、クロちゃんはこちらに顔を向けてジッと見つめるばかり。
なんだかその上目遣いな顔が、「でちゃったんだもん」「臭かった?」と言ってるみたいなので、「臭いよー」「顔の近くでしないで」と話しかけてみる。と、今度は上目遣いでジッと目を見つめながら、ちっちゃい声で「にゃぁ」と鳴いた。なに言ってるんだかわかんないけど、なんとなくおかしかった。
クロちゃん、可愛い子ぶってもごまかし切れないよ。

ヒザの上に乗ったり降りたりを3回ほど繰り返し撫でていたのだが、いい加減にしようと別れた。なんだか冷えるヒザが寂しい。