恐ろしい出来事

昨日の夜は、いつもより長く一緒に遊んだからか、楽しくてしかたないといった様子の宙(ソラ)は、深夜1時前になってもまだ一緒に遊んでと誘い鳴きして寝てくれなかった。
トイレに行きたかったせいもあったようで、1時を過ぎてからようやく”おちぃ”をしたのだが、その後も寝るそぶりがまったくなかった。
トイレの後始末をした後に抱っこをしたりして相手をしていたのだが、玄関先に出たがったので出してやった。
いつもならドアの近くで辺りの臭いを嗅いだりしたらすぐに戻ってくるのに、この日は戻ってこなかった。
外が怖くて今まで自分から降りたことのない階段を、臭いを嗅ぎながらゆっくり降りはじめた。
きっと1、2段ほど降りたら戻ってくるだろうと見ていたら、どんどんと降りて行く。
内心ではすごく慌てて、でも脅かさないようにゆっくりと踊り場を曲がって行く姿を追ってすぐ下の階に降りたが、そこで姿を見失ってしまった。


「宙どこ!、このままだと野良猫になちゃうよーっ!」「宙を失うのはいやだよー!」と心の中で叫んでいた。
そんなことが起こったらと思うと、あまりの恐ろしさに頭がクラクラした。

絶対に見つけなくてはと、必死の想いで黒猫の姿を探して1階まで降りたけれど、どこにも見つけられない。
いったいどこへ行ったのかと焦り、どこを探したらいいだろうかと思っていたら、上の方から猫の叫び鳴きが聞こえてきた。
大きな声で2回ほど聞こえた鳴き声の方を見ると、宙が上の階からこちらを見下ろしていた。
大慌てで、でも音を立てて宙をおどかさないよう上の階へ行くと、別の家のドアの前にちんまりと座り待っていた。
ホッとしたが、まだ抱き上げていないので気が抜けない。
パニックを起こしていて私のことが分からなかったら逃げ回ってしまう。
そうなれば、それこそ2度と宙とは暮らせなくなってしまうかもしれない。

ゆっくりと近づいて行くと、私の顔を見て安心したように見えた、そしてドアを開けてと「アァゥオン」と大きな声で鳴いた。
家に帰りたいと鳴いた宙をすばやく抱き上げて、怖がって腕の中からすり抜けないよう注意しながら、落ち着くようにトントンと体を軽くたたきつつ家に連れ帰った。
玄関にたどり着き、家の中に入った途端にギュウギュウと力づくで肩に登ったかと思うと、すぐに下りて奥の部屋の前に行きこちらを振り向いた。
その間にドアを静かに閉めて、こちらを見ている宙に近づこうとすると背中を丸めて尻尾を膨らませた。
このタイミングで恐怖に駆られて私のことが分からなくなったらしい、外でなくて良かったと思った。
小さな声で名前を呼んでゆっくりと近づいたら、ちょっと緊張はしていたが撫でさせてくれたので、もう大丈夫だとやっと本当に安心した。

その後、寝ようと横になったのだがショックでなかなか寝付けない。
宙もそうだったようで、しばらく別の部屋で起きていた。
深夜2時半になろうかという頃になって、宙がベッドにやって来て何度も私の左肩にしがみつくようにした。
肩をギュウギュウとつかまれる感じが何度がしていたが、少しして眠れたらしい。
宙の温もりと息遣いが伝わってきて、私も眠りに落ちた。

もう2度とこんな思いはしたくないので、これからは玄関先とはいえハーネスをつけることにする。