またね、また明日ね

朝にクロちゃんを見かけた。会社へ行こうと歩いていると、後ろの方で小さく鈴の音がしたので振り返ってみると、植木の匂いを嗅いだり、顔をこすり付けたりしている。それを歩きながら何度も振り返って見ていた。遠くになる姿に、今晩も会えるといいなと思う。

そして夜。ミケにゃんと仔猫達は寝ているのか姿を現さなかった。クロちゃんは?...ちょっと心配になりながら、いつも撫でている場所へと足を進める。
すると、いつものように「にゃあっ、あっ、あっ」と鳴きながら駆け寄って来るクロちゃんが。「待っててくれたのね」「寒かったね」そう声をかけて、キャットフードを入れた容器を差し出す。

カリカリカリといい音をさせて食べていたキャットフードを、半分ほどなくなったところで取り上げる。ミケにゃんと仔猫の分も入れているので、量が多いためだ。あまり食べさせると「ゲプッ」「ゲプッ」と言うし。

食べた後は撫でなで。いつものように全身を撫で回し、横になるのでフワフワした毛のお腹も撫でまくり。
そうこうしていると、なんとなくクロちゃんがあのアパートのところへついて来て欲しいそうにする。ついて行こうかなと思い立ち上がると、クロちゃんはそれを合図に歩き始める。
ついて来ているのかと振り返って確認しながらアパートの前に到着。「にゃあっ」と鳴いて、ブロック塀や植木などに顔をこすりつけるクロちゃんを撫でることしばし。時折アパートの奥の方を見ては行きたそうなそぶりをするのだが、そうしない姿に、私が一緒には行かないということを理解しているのかなと思う。

少し一緒に居たのだが、さすがに寒くなってきたので立ち上がり、クロちゃんに「バイバイ」と言うと、じっと顔を見た。そして急ぎ足でいつも撫でている場所へと戻っていく。これじゃいつまでも別れられない。そう思いながらクロちゃんの後をついて、いつも撫でている場所へ。

どうにもね。お互いに別れるのは寂しいよね。なんて、実際にクロちゃんがどう思っているのかわかんないけど、勝手にそう想い合っているんだと信じて「またね、また明日ね」と何度も声をかけた。
が、どうしても離れがたいので、おもむろに抱っこして顔をくりくりと撫でた。そこへ人が通りかかったので、気持ちよさそうにしていたクロちゃんが降りたがる。降ろしたらさようなら。また明日ね。