イリコが目当て

野良猫

朝。人通りが無いので仔猫達の様子を見にクロちゃん家の前まで行ってみる。
ちょこちょこと遊んでいる茶トラと、ミケにゃんにピッタリとくっついて寝ている黒ちびと、手の届く位置に座っているキジトラ。もちろん、キジトラに手を出してみる。
差し出した指の臭いを嗅いで猫パンチ。ガジガジかじって猫パンチ。鋭い爪が指先に当たるし、鋭い牙で噛まれるのでちょっと痛い。油断しないよう手を近づけたり離したりして少し遊んた。やっぱりキジトラは慣れてくれたかもと朝から嬉しい気分になる。

キジトラと遊んでいると、少し離れた所から、興味深々といった表情の黒チビと、眠たげな顔をした茶トラがその様子を眺めていた。おっとり茶トラと食いしん坊の黒チビも早く慣れて欲しいな。

今日の夜もミケにゃんが出迎えた。もちろんイリコが目当てだ。
くれるんでしょって感じで座って待っている。「はいはいお目当てはこれね」とイリコを入れた箱を置いたのだが、なんでだろう、すぐには食べようとしない。
ちょっとすると黒チビがやって来た。今まで寝ていたようで少し寝ぼけた顔をしていたが、イリコの匂いを嗅いだのだろう、テコテコッと急ぎ足になって倒れ込むように箱へ手を突っ込み頭を突っ込みカリカリ、パクパク。
ミケにゃんも黒チビと一緒に食べ始めた。カリカリ、パクパク。仔猫が来るのを待ってたのかな。
少しするとキジトラがチョコチョコとやって来て食べている2匹の側で座った。手を伸ばして撫でようとすると、コロンと横に。そうしながらも伸ばした手をかじったり、ポンポンと叩いたり。なんだかくつろいで遊んでいる様子。
お腹を撫でたり触ったりしても嫌がらない。もしかしてかなり慣れてくれたのかもと喜んだ。
茶トラが出てこないので貰われたかなと思ったのだが、寝ていそうなところを覗き込んでみると、ぐっすりと眠っている茶トラの背中が見えた。ふふっと笑ってしまう。寝る子は育つと言うよね。でも、起きてこっちに来てくれるといいのにな。

別れるのがちょっと辛いけど、今晩もキジトラはたーんと撫でることができて、ほんわか嬉しい気分で家に帰った。