雷が怖い

三段峡の三段滝

雷鳴と雷光の夜に、見知らぬ家の中を歩き回っていると、遠くから恐怖に怯えたような猫の鳴き声が聞こえてきた。
その声に「は〜い」と答えると、声はいっそう大きくなり足元で聞こえるようになった。
自分の声と、宙(そら)の鳴き声でゆっくりと夢から覚めて目を開けると、真っ暗な中で瞬く雷光を見た。空気を震わせる雷鳴を聞いた。そして宙が恐怖で鳴いていた。

宙を膝に乗せると、「はあ、はあ」と荒い息をして振るえている。
明かりをつけていないため、黒猫である宙の表情は見えないが、怯えているのだろう。
体温がとても高く肉球が汗でしっとりしている。そんな宙をぎゅっと抱いていると、こちらも汗だくになってきた。
稲光が見えないように覆いかぶさるようにして、雷鳴が少しでも聞こえないように耳を押さえてみたり、顔を近づけて「大丈夫」と何度も言ってみたが、荒い息も、体の震えも、高い体温も収まらない。
しばらく湯たんぽみたいな宙を抱いていて汗だくになっていたが、たまらず膝から降ろすと廊下に出て行った。

もう一度横になっだが、廊下で宙が力いっぱい鳴いているので寝れない。
廊下に行って撫でてから、部屋の明かりをつけ、テレビをつけてその前で横になった。
宙のため、雷の光や音を紛らわせようと、見たくも無い深夜番組をなんとなく見ていると、傍らに瞳孔が開き息を荒くしている宙がやってきた。
うちわで扇ぎながら、横になってテレビを見ていると汗が引いてきて、何度もあくびが出るようになった。しばらく雷も聞こえてこないので、宙も落ち着き眠そうにしている。
気づいたら部屋の明かりもテレビもつけたまま寝ていた。

お昼過ぎまで雷雨だったので、雷が鳴るたび宙は心細そうに鳴いていたが、2時頃になると雨だけになり、昨日の夜から怖くて眠れなかった宙はぐっすりと眠っている。