ふてぶてしい態度の猫を

忙しいので今日も仕事。しかし日曜日なので家の掃除などを済ませてから出かけた。
あと数歩でクロちゃん家という所でミケにゃんがこちらを確認し、タタッと駆け寄ってくる。その後をキジトラが続く。
辺りに飼い主や人がいないのを確認し、こそこそと昨日の残りのキャットフードを取り出して、道端に一つまみずつ置いてやる。そしてすばやくその場を歩き去った。
少し離れたところまで歩くと、後は歩きながら何度も振り返って確認してみる。ミケにゃんの分は少なめだったからか、キジトラの方に顔を寄せて食べるミケにゃん。もう少し置いてやればよかったと思いながら、どんどんと歩いて離れた。夜に会えるといいけなと思う。

夜。ミケにゃんと仔猫達が飛び出してきた。仔猫はキジトラとちび黒の2匹だけで、茶トラがいない。よく寝る茶トラは今も夢の中なのかも。
3匹にキャットフードを貢いで、一通り撫でてから小走りにクロちゃんが待っていてくれる場所へ。
しかし、クロちゃんは姿を現さなかった。いつもより2時間近く早いからか。後からまた来てみることにして一度家に帰った。

クロちゃんと会う時間帯となったので、いつも待っていてくれる場所へ行ってみると、「に"ゃ"、あ"っあ"っ」と鳴く声がした後に、クロちゃんが登場。
いつもキャットフードを食べたり撫でられたりしている場所へと鳴きながら移動し、尻尾をピンと立ててこちらを振り返り「にゃあん」「にゃん」と鳴いている。
目の前にキャットフードを置いても、いつものようにすぐには食べないクロちゃん。2、3度ほど撫でられた後で容器に顔を近づけ「カリカリ」と食べ始めたのだが、何故か今日は少しすると顔を上げて食べるのを止めてしまった。
どうもお腹いっぱいになったらしいので、どこかで食べ物をも貰えたのかも。

今日も無理に抱き上げて膝に乗せ、顔をくりくりと撫でて「クロちゃん」「寒いね」と話しかけてみる。
しばらく眠そうな目をしておとなしく撫でられていたけれど、長くは付き合ってくれない。ごぞごそと動いたかと思うと、ぴょんと飛んで腕の中から逃れていった。残念。
一緒にいる時間帯だけでもあったかくして過ごせたらいいのにと思うが、あまりこちらの勝手を押しつけられるもは嫌だろう。

膝から降りた後も撫でていたのだが、少しするとクロちゃんが落ち着かなくなった。駐車車両の下側を見つめ、なにやら緊張している様子。
またしてもおやじ猫がいるのかもと近づいていくと、見覚えのある猫の姿が現れた。肝の据わった猫で人間が近づくくらいではまったく動じない。こちらの様子を伺いながらちんまり座っているのだった。
ある程度の距離があれば大丈夫と知っていて、かなり近くまで行かなければその場所から移動するようなことはしないその堂々とした態度は、この辺のボスだからか。

しかし、クロちゃんが落ち着かないのではこちらも落ち着かないので、ふてぶてしい態度の猫を追い払うためしばらく後をついて歩いた。
距離を縮めると少し移動するのについて歩いていると、人が入れない建物と建物の隙間へと入り、1メートルちょっとの場所にある発泡スチロールの容器に溜まった水を、ビチャビチャと音を立てながら飲み始めた。
まるで、ちょっと散歩していてノドが乾いたから水を飲んでるといった様子。人に追われているという恐怖や焦りやが微塵もなく、じつに悠然としている。人間は隙間に入れないとよくわかってるみたいだ。
さて、後をついていくことができなくなったので、声でもかけてみるかと「水を飲んでる」「あっちへ行ってくれない」と言ってみた。少し驚いた様子で振り返って見たが、ゆったりとした動きでさらに奥へと歩いて行った。

とりあえず行ってしまったので、緊張しまくっているクロちゃんの所へ戻って行くと、いつも撫でている場所へと移動した。さっきまで猫が居た辺りを見たり、去っていった辺りを見たりとまるで落ち着かない様子なので、まったりと撫でられてはくれない。
さてどうしたものかと思いつつしばらく撫でていたのだが、今日はこれで帰ろうと立ち上がり「ばいば」と手を振って見せた。と、クロちゃんはスタスタと行ってしまおうとしている。その後姿を見つめながら、「ばいばい」と言って手を振るのが別れの合図だと理解したんだと感心した。